08年10月31日
厚労省は10月31日、第5回安心と希望の介護ビジョン(前田雅英座長・主と大学東京都市教養学部長)を開催した。
今回で5回を迎える当会だが、冒頭、昨夜行われた政府与党会議にて決定された「介護従事者の処遇改善のための緊急特別対策」について発表が行われた。
平成21年度介護報酬改定において、介護従事者の処遇改善を図ることを目的に、介護報酬をプラス3%の改定を実施するというものである。併せてこのプラス3%の介護報酬改定に伴う保険料の上昇を段階的に抑制する措置を講じることとし、保険料への全額の反映を2年据え置く形を決定した。
この2点の被保険者負担を国費から支出するものである。当改定による所要額はおおよそ1,200億円程度。
昨日実施された介護給付費分科会とあわせ、介護従事者の人材難と処遇改善に生かされる施策となる。厚生労働省ではこの改定の効果測定を実施する予定で、鈴木老人保健課長は「雇用形態・サービス種別・地域などのさまざまな要素により従事者の給与改善状況に差異はあると思うが、実態として給与所得の上昇が得られたのかという検証を行っていきたい」とした。
本題である安心と希望の介護ビジョンの具体的な検討内容であるが、まずは古川静子委員(日本化薬メディカルケア株式会社 デイサービス部部長)提出の資料による提言から始まった。
利用者や家族の視点を柱にする中で、求められるサービスの質の向上をいかに確保するのか?また実施された施策は具体的な効果が得られているのか?これらの検証が必要であるが、介護従事者個人におけるモチベーション維持、そして事業所が「さらに一歩踏み込んだサービスを実施したい」と考えられるような仕組みづくりが必要だとした。
また、認知症ケアの確立と医療との連携という提言では、現在必ずしも円滑とは言い難い医療と介護の連携に触れ、介護従事者の立場から、専門的見地からの医師の立場と同等のコミュニケーションがとりにくい状態にあることを指摘した。
医療と介護における共通マニュアルの作成や用語の問題についても提言が行われ、「介護従事者側からはどうしても意識の共有が困難で、一歩引いてしまうところがある」事を改善し、本来目指すべき地域ケアの基盤作りが必要であり、このような垣根を取り払うことが必要とした。
「地域ケア」という言葉については、村上勝彦委員(社会福祉法人慧誠会 帯広けいせい苑 施設長)から「地域」の定義をどう考えるか?という問いかけがなされた。
基本は小学校区などの小規模な区域となるであろうが、ケースに応じては二次介護圏や三次介護圏等も設け、柔軟に対応が可能な範囲にすべき、と提言したのは、鳥羽研二委員(杏林大学医学部教授)。前田座長からは、市町村単位が基本になるのでは?との声も聞かれた。
これまで、参考人・委員からの意見が様々に出される中で、厚生労働省は「参考人・委員からの主な意見」(資料3)としてまとめているが、これが今後のビジョン策定の基盤となる予定。
堀田聰子委員(東京大学社会科学研究所 特任准教授)や袖井孝子委員(お茶の水大学名誉教授)をはじめとし、各委員が「この資料3では利用者や家族の視点に立った文言が盛り込まれていない、これを多く取り入れるべきである」と口をそろえた。
審議終盤の11時30分、舛添厚生労働大臣が入室。多忙な中での出席だが、やはりこの資料3について、同様に「利用者・家族の視点をビジョンの柱にし、これが国民に伝わるものにしてほしい」との指摘がなされた。
また、「利用者・家族が介護を必要とし始めてから、それが終わるまでの一本の道筋を示してほしい、多くの制度が十分に利用されていない状況を改善できるようにしてほしい」と述べ、自身の介護経験から、「現在は介護保険制度が確立され、ある程度わかりやすい仕組みができているが、以前はそれすらなかった。国民がより安心して制度を活用できるようにしてほしい」という見解を伝えた。
本日交わされた意見を踏まえ、「参考人・委員からの主な意見」も内容を一歩進め、次回を迎えることとなりそうだ。
次回開催は11月12日(水)10:00~を予定。
議事次第、構成員名簿[PDF:162KB]
資料1 古川委員提出資料[PDF:886KB]
資料2 堀田委員提出資料[PDF:151KB]
資料3 参考人・委員からの主な意見[PDF:616KB]
介護従事者の処遇改善のための緊急特別対策[PDF:64KB]
