介護と福祉の情報サイト ふくしじん

特集・コラム

今後の福祉・介護ビジョン:第1回 「安心と希望の介護ビジョン」第1回会議資料を踏まえた所感

08年08月27日

安心と希望の介護ビジョンの模様

 2008年7月24日、厚生労働省老健局が運営所管となり、「第1回 安心と希望の介護ビジョン」会議が開催されました。
今回はこの第1回会議資料というフィルターを通し、福祉・介護ビジョンの入り口に立ってみたいと思います。

第1回会議資料を見る限り、「安心と希望の介護ビジョン」は要約すると下記の3点が主要テーマになると思われます。

 

  1. 超高齢化に足を踏み入れ、それを支える社会資源として介護事業所の安定運営が欠かせない。現状では様々な要素が絡み合い、充分な機能性を発揮できていない為、これを如何に改善し、制度としての持続性を確保するか?
  2. 福祉・介護における人材不足の改善。
  3. 社会保障の基礎構造の改革を実施し、地域連携の具体的実現及び推進を図るための仕組みづくり

 

 第1回会議資料の内容は、多くが統計分析が占め、問題提起をしている段階です。
上記1.の課題を解決するための資料は全体として41ページある中の27ページが割かれており、社会保障費の抑制や対策を再構築することが必要である、と問題提起しているわけです。

 具体的には高齢者介護の過去の変遷の確認や推移、統計的な見地からの未来予測(主に年齢別人口割合や費用予測)が記載されています。

 年金問題や後期高齢者医療制度を中心に、社会保障制度のあり方が問われるニュースが氾濫しておりますが、社会保障制度が国民の生活を支える基盤となるのは言うまでもありません。

 この点を考慮すると、今回の「安心と希望の介護ビジョン」の動向を見るだけでは目指すべき姿や、福祉・介護事業所として先手を打つ形での経営基盤確保は困難といえるでしょう。

 つまり全体のビジョンを俯瞰(ふかん)する中で、医療や健康という命題についても予備知識として備え、自事業所内だけの問題として捉えず、地域として国民生活を支える連携体制を持たなければ、困難な状況を打破することはできないことを意味しています。

 では、全体のビジョンとは何を指すのでしょう?
去る6月19日に社会保障国民会議の中間報告がなされましたが、正にこの「社会保障国民会議」こそが全体像を表しています。

 社会保障国民会議は福田首相の指示により、本年1月25日の閣議で決定され、1月29日に初会合が開かれ、下記3点について分科会が開催されることになりました。

 

  1. 年金・雇用を議論する「所得確保・保障分科会」
  2. 医療・福祉・介護を議論する「サービス保障分科会」
  3. 少子化・仕事と生活の調和を議論する「持続可能な社会の構築分科会」

 

 中間報告においては直接的に目次に福祉或いは介護というキーワードを含む章ももちろん多いのですが、それ以外の章においても医療・福祉・介護に関連する文言が頻出します。

 この詳細についてはいずれ改めて特集の中で掘り下げてみたいと考えております。 社会保障国民会議について詳細にお調べになりたい方は首相官邸のホームページをごらんいただくと、これまでの経緯や資料などがふんだんに用意されております。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/syakaihosyoukokuminkaigi/

 ご存知の皆さんも多いと思いますが、今回のテーマにあげている「安心と希望の介護ビジョン」が開催される以前から、医療分野においては「安心と希望の医療確保ビジョン」という会議が開催され、問題提起段階を超え、現在はその具体的議論を実施するステージに入っております。

 この中にも既に地域連携と医療・福祉の連携が強くうたわれております。

着目すべき点は現在介護・福祉分野においても大きな問題となっている人材確保についてです。

 今回の安心と希望の介護ビジョンの要点2にも挙げましたが、絶対的な人的資源の不足は医療分野でも同様の状況下にあり、過去の閣議で決定した「医師数の削減」を撤回し、医師養成の促進が必須項目として取り上げられることになっています。

 しかし、単純に医師の数を増やすだけでは現状の医療体制を根本から改善することは出来ません。
一例を挙げれば、医師の業務内容の見直しです。

 会議内で話し合われていた事のひとつとして、本来的に「医師でなければできない業務」は、現在の医師の業務内容のうち、おおよそ60%程度だそうです。

 看護師を初めとした病院全体のスキルアップや業務分担が効率的に行えば、残りの40%の仕事をカバーできるといわれています。

 もちろん看護師不足も深刻ですし、すべてがそれに当てはまるわけではないと思います。

 ここで重要視すべきは、医療の現場において様々な角度から実態調査をし、職場環境の改善や社会保障制度の根本的な見直しを行えば、不足していると想定される医師の人数を純増するという手立てだけではなく、相互に業務を請け負うことで「医師でなければできない業務」を実施するためのリソースがカバーできる部分があるということです。

 福祉・介護においてもこれは同様に置き換えられる部分が存在するのではないでしょうか?

 そのような自助努力をしながら制度として改善されてくる部分を当てはめていくと、事業所としての経営や、職場環境の改善、職員の処遇改善の道が見えてくると思われます。

 安心と希望の介護ビジョンでは、制度として定めている必須業務内容の見直しや、介護報酬の水準の適正化調査による職員の処遇改善案なども盛り込まれており、平成21年度にもこれらの要素を盛り込んだ対応策が提示されてくると推察されます。

 さて、要点の最後に挙げました「地域連携」ですが、在宅医療支援診療所を中心とした在宅診療のイメージ図が取り上げられています。

 これには全ての在宅サービス系事業所が関連してきますし、その関連性をどう実現するかが大きなキーポイントとなります。

 単にAさんの診療情報を各事業所間で共有すればよいというものではありませんし、そこには充分なセキュリティを配備した上で、個人情報の取扱いが不可欠になります。

 地域連携、在宅医療ということに関しては今後益々検討が行われ、これに付随した人材や設備投資が求められてくることは容易に察しがつきます。

 高齢者介護の分野において「運営」→「経営」という転換が盛り込まれてから8年の歳月が流れました。行政動向と照らし合わせた事業所の経営ポリシーを決定し、一手先を見越した戦略を打つことが求められる時代であると、再認識していく必要があるのではないでしょうか?

※参考資料
厚生労働省より
「安心と希望の介護ビジョン」第1回会議資料
「安心と希望の医療確保ビジョン」とりまとめ資料


このページはプリント用のページです。 元のページを表示